明日も歌う あなたのために

「あ、看護師さん!!お、弟が………!!」


「お兄さんですか?!大丈夫です!!」


佐原さんは俺の元に駆け寄ると、俺の口元に軽く手を当て、ポンポンとリズムよく俺の背中を摩る。


───ち、近い…………。



「自分で吐いた息を吸ってごらん。大丈夫……ゆっくり深呼吸して……」



高まる緊張とは裏腹に、呼吸も鼓動もゆっくりと落ち着いていく。



「大丈夫か?!ミナ」


「うん、もう…大丈夫」



結局助けられてしまった……。


落ち着いた俺の様子を見て、兄ちゃんと佐原さんはホッと安泰の息を吐いた。


「──でも、一体何が?何か興奮させるような事があったんですか?それとも急に、ですか?」


佐原さんの問い掛けに、俺達は二人して顔を見合わせ、バツが悪いというように俯いた。


「自分がミナ……弟を殴ろうとして…」


「あ、いや俺が……兄ちゃんの結婚式費用が俺の葬式費用になるとか言ったから…」



「え………?!湊くんそんなこと言ったの!?」



佐原さんは今にもさっきの兄ちゃんのような表情になりそうな顔をしていて、俺は慌てて訂正した。



「違う違う!確かに言ったけど、ちょっと挑発しただけで、本気で言ったわけじゃないんだ!」



「はぁ?!お前さすがにそれは冗談キツすぎるだろ!!」



「確かに笑えないけど!今なら笑えるかなって思ったんだってば!」



「─────どうゆうこと?」


キョトン、とした兄ちゃんと佐原さん。

完全に俺の言葉が足りなかったんだけれど、すぐ怒りだした兄ちゃんも兄ちゃんだと思う。






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