明日も歌う あなたのために
「おいお前ら……ちょっとは静かにしろよな」
ガヤガヤと騒ぐ子供たちの中で、ため息混じりにそう呟いたのは、日に焼けた肌に短髪の背の高い少年。
───あ、この前湊くんの面会に来てた子だ…………。しかも、多分一緒に歌ってた。
「んだよ龍平。看護師が美人だからってカッコつけやがって〜」
そうからかうように龍平と呼ばれた少年に一人の男子が言う。
「ばーかちげえよ、一応ここは病室だし、一応こいつは病人だぞ」
────”一応”って君………。
「いーよ龍、別に。退院した後の為に、騒がしいのにも慣れとかないとね」
彼を庇うようにそう言った湊くんの声は、少しだけ弾んでいた。
────やっぱり嬉しいんだ………湊くん。
本物の笑顔で退院を喜んでいる湊くんを見て、私もすごく嬉しくなってきた。
────でも………なんでかな。
それと同じくらい、寂しいなって思ってる。
湊くんを担当してまだ1ヶ月位しか経っていないけれど、やっぱり他の患者さんより遥かに距離が縮まったのもあって。
───湊くんが退院したら…………もうほとんど他人みたいになるのかな…………。
胸の奥が、キュッと締め付けられる。
──私、いつのまにかこんなに湊くんに情が移ってたんだろ………。
嬉しいのに寂しいような、そんな感情を悟られないように、私は急いで用を済ませて、そそくさと病室を出ようとした。
するとその時……、