明日も歌う あなたのために
退院ボケでぼーっとしている俺の顔を、母さんは心配そうに覗き込む。
「一応今日から平日だけど……学校はどうする?今日は休む?」
「あ、ううん行く行く。ちょっと寝ボケてたっ」
そう、今日は久しぶりの学校だ。
実に4ヵ月振り。
最早懐かしさまで感じる制服に身を包んで、朝ごはんのトーストを頬張る。
「パサパサじゃないパンって最高〜」
そんな俺を見てクスクスと笑う母さんと、一緒に朝食が食べれて嬉しそうな岬。
「母さん行ってくるね!」
少し急ぎ足で全ての支度を終えて、玄関で靴を履きながらそう叫ぶと、母さんが慌ててリビングから出てくる。
「待ちなさいっ、お母さんが車で学校まで送るから……」
「大丈夫大丈夫、どうせ龍と一緒だから。岬を送ってあげて!行ってきます!」
「あ、ちょっと湊……!」
母さんはまだ何か言いたげだったが、実は寝ぼけてたせいで結構時間が無い。
慌て気味で家から出ると、待ち構えていた龍に抑えつけられるように止められる。
「あ、龍おはよ」
「おはよ、じゃねーよ……。てめー走ろうとしただろ」
「まさか。ちょっと急ごうとしただけだよ。それに、龍が待ってるって分かってたしね」
両親が仲良しで、幼なじみで家も近い龍は、互いの親の進めもあってなのか、
俺が入退院を繰り返すようになってからは
俺が学校に行ける日は、行きも帰りも一緒に歩くことが暗黙の決まりみたいになっていた。
それ以前まではいつも遅刻ギリギリの龍を俺が置いて小学校に登校して居たんだけれど、
そんな決まりが生まれてからは、龍は俺が家から出る時間にあわせて、一度も寝坊せずに毎日家まで迎えに来てくれいる。