明日も歌う あなたのために
家から学校までは徒歩たったの20分。
俺達は昨日のテレビがどうとか、1年の先生が結婚したらしいとか、そんな他愛もないことを駄弁りながら学校に辿り着いた。
2年生の教室は3階。
もちろん学校内にエレベーターなんてあるはずがなく、確実に運動不足の俺は息を切らしながら「もう歳だー」なんて冗談を言いながら久しぶりにその階段を登る。
やっと2年3組の教室の前に辿り着き、俺が扉に手を掛けると、龍は「待て」と俺の腕を掴んだ。
「ちょっとでもヤバくなったら俺に言え。俺じゃなくてもいーけど、なるべくお前の近くに居るようにするから」
真剣な顔つきで、言い聞かせるように俺にそう言う。
なんだか面倒くさい予感。
「うん、おっけ。ありがと」
「保健室行く時もなるべく俺に言ってくれ。体育の時もなるべく保健室に居てほしーんだが……」
「え、やだ。皆の見学くらいはしたい」
一応自分の希望も主張する。
体育に参加したいなんてワガママは今更言わないけれど、皆が運動してる所見てるのは好きだし、ボール拾いだの得点版だの審判だのくらいはさせてほしいから、譲れない。
それに体調不良でもないのに保健室で保健の先生と二人っきりで自習とか気まずすぎていやだ。
「───わかった。だけど俺の目の届く所にいろよ」
「大丈夫だよ別に、見てるだけ。うろうろしない」
「よし。あとは……薬の入れてる場所俺にも教えておけ」
「スクバの横側についてる小さいポケットの中」
「一応ブレザーのポケットにもいくつか入れておけ」
「えー、やだよ!歩く度にカシャカシャ言うじゃん!」
「そんくらい我慢しろ。万が一の事があったら後悔するぞ」
「大丈夫だよ」
「わかんねぇだろ」
「大丈夫だってば」
「わかんねーだろっ!!?」
突然、大きな声で叫ぶようにして言った龍に、俺はもちろん廊下に居た他の生徒たちも驚いて、振り向く。