明日も歌う あなたのために
「なぁっ!久しぶりだし、セッションしねぇ?!」
言い出したのは、相沢だった。
「高梨が歌って、俺がドラム叩くから飯田はギター弾けよ!」
龍はギターボーカルだ。
音域こそ広くはないが、龍は歌だけじゃなくギターも俺に劣らず上手い。
相沢もドラムは2年の中で一番上手いと思う。
だからそのポジションになんの不満もない。だけど……
「ねぇ、ベースは?」
「ベースは………高梨が歌いながら弾くということで!」
───適当だな……。
まぁいっか、1年生にやってもらうのもなんだし。
「よし、じゃあやるか!」
「なんの曲?」
「最近シャンプーのCMで聴く、あの曲!」
何の曲だかよくわかってない俺と龍に、相沢はその曲を軽く口ずさむ。
「あーっ!思い出した!」
「おっけー!なんか雰囲気でやってみるわ」
三人がそれぞれ自分の定位置につくと、相沢がドラムスティックでスリーカウントをする。
曲が始まる。
龍とアイコンタクトをとりながら、4本の玄を掻き鳴らす。
そして、深く息を吸って
いつもの倍くらいの声量で歌う。