多分、姫。
「俺は、所詮“パティシェになる”という決まったレールを歩かなければならない。
それを世間は皆、期待している。
“才能”なんて、全くないのにな。」
ダム、ダムとボールをその場でドリブルしながら話す俺の話を奏は黙って、耳を傾けている。
そんな様子の奏のせいなのか、どんどん感情が口から言葉がこぼれ落ちる。
「誰が俺を“千歳”の人間として見てる。
顔のいい千歳の有力株ってとこかな(笑)?
誰もが俺を……“千歳一期”を見てないんだよ。
女の子も、……社会も。
だから俺もそんな社会を利用するんだ。
せっかく期待されて、優遇されてるのなら、それを使わなきゃ損、でしょ?
利用出来るものは、利用する。」
―――ずっと、隠してきたのに……。
「“本物”なんていらない。」