赤イ糸ガ切レル時
「それで?」
「だから…人間は一生懸命成長した植物たちをまるで気なしに自分たちのためとして殺し、それからそれを自分たちのものとして何かを作り出す。やっていることはまるきり泥棒よ。というか、それ以上の殺人、いや、殺植物だわ。違う?」
少女の顔が声のトーンとともに光に近づいていた。迫力がすこい…。
光は何と言い返そうかと考えた。冷静に考えるとただのへ理屈だが一応筋が通っているようにも感じられていた。
「ルールは主として人間が秩序よく生きていくために作られている。植物には義務がない代わりに権利がない。同じ地球上に住んでいるが、住む世界は違うんだ。」
「そんなの納得できる答えじゃないわ。」
少女は間髪入れずに叫んだ。しかし光も引き下がる気はなかった。
「君の考えは一見素晴らしい。だが、それで盗みをしていいとは言えない。そうすれば社会の秩序というのが守れない。人間は我慢することができる。考えることができる。それも、他の動植物の何倍もね。そのために毎日このクソ重い脳背負って生きているんだから…。」
「チミこそへ理屈ね。」
少女は余裕を保った笑みを光に向けた。
「もう知らない。」
光の頭に何ヶ月振りかに血が上った。正しいことをしているはずなのに通じないこの感覚がひどく腹立たしかった。
「もう、僕は帰ります…。ちゃんとお金は払ってくださいね。」
「えっ。チミ。何か用事があるの?」
少女がさみしそうな顔をした。ように光には思えた。
「えっ。別に用事があるわけじゃないけど…。」
「そう。じゃあ大丈夫だね。」
少女は光の手を握った。突然の出来事に光は対処できなかった。
少女は光の体をグイッと引き寄せた。
「ん。何を…。」
少女は答えずにそのままコンビニのドアをくぐった。
「チミ。走って…。」
外に出るとすぐに少女は叫んだ。
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