愛を込めて極北
 「よかったですね。あんな綺麗な人のお眼鏡にかなって。このまま次期社長と結婚ってなったら楠木さんは、未来永劫リブラン社からの支援も約束されるし、めでたしめでたしじゃないんですか?」


 「でもね……。正直なところ楠木さんは、思うところがあるみたいだよ」


 「思うところ?」


 「……今の状態だったら、楠木さんのことを副社長のヒモだって、世間はみなすでしょ? 男のプライドみたいなものもあって、今のままではよくないと楠木さんも分かってはいるの」


 「でも……。副社長のご機嫌を損ね、リブラン社からの支援がストップするようなことがあれば……。今の楠木さんの活動には、致命的な損失となりますよね」


 「そう。それがあるから楠木さんは、強く出られないんだよね」


 「そうなんですか。でも私としては、今のままが一番のような気がしますけどね。好きなことに没頭するには、潤沢な資金が必要ですし。楠木さんに釣り合わない人ならともかく、あの副社長みたいに、美貌も財力も学歴も能力もある人だったら、申し分ないじゃないですか」


 自分に置き換えてみると。


 大会社のご子息(しかもイケメン)が、お金に糸目をつけず私をサポートしてくれて、私の自由にさせてくれるのだとしたら。


 何も迷うことなく、飛び込んでいきそうな気がする……。
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