愛を込めて極北
 二人のラブシーンに動揺しただけじゃない。


 嫉妬……?


 「私……?」


 楠木は夢をかなえるために、渋々百合さんとの婚約関係に甘んじているんだと聞かされていた。


 リブラン社からの協力を得るためには、百合さんとの婚約は不可避であると。


 形だけの婚約、政略結婚、そこに愛はないと……。


 なのにさっきの、情熱的なキスと抱擁は?


 いくら百合さんに求められたからって……。


 楠木もそれと同じくらい、甘く優しく百合さんの要求に応えていた。


 百合さんは楠木をどうしても自分のものにしたくて、楠木はリブラン社のサポートが必要という下心もあり、百合さんの求愛を利用している。


 ……それだけだと思っていた。


 それだけじゃない。


 楠木もまんざらじゃないのかも?


 リブラン社の社長令嬢で現副社長、次期社長でもある百合さんは、今後の活動のためにも手放せない存在。


 ちょっと年上ではあるものの、年齢を感じさせないあの美貌。


 年上女に金銭的に依存するというヒモのようなポジションを受け入れられず、抵抗もあるものの、内心は役得だと思って喜んでいるのかも。


 今の状態に満足しているのかも?
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