愛を込めて極北
 楠木自身も、フランクリン隊の悲劇と謎には大変興味を持っており、運よく旅の途中で何か手がかりを発見できないかと期待していた。


 人の接近をも拒む過酷な北極圏の環境の中、170年以上前の遺物がまだ残されており、謎を解明するような新事実が辺りに転がっている可能性もある。


 楠木もそのわずかな可能性に賭けて、キングウィリアム島を歩く。


 目前に迫った出発の日へ向けて、入念な準備を進めている。


 「……またこんな時間」


 楠木のタイムラインを追いかけているうちに、時計は午前二時を示していた。


 楠木の極北での日々をチェックしてると、時間があっという間に過ぎ去ってしまう。


 (……時差が半日くらいあるから、日付は一日前のお昼過ぎ辺りかな)


 投稿を確認し、そして時計を見つめながら、楠木は今頃何をしているのだろうと考えてしまう。


 「だめだ。毎日こんなことばかりしていては」


 なかなか楠木から卒業できない自分が改めて嫌になり、衝動的に楠木のFacebookのフォローを解除した。


 これでもう、記事が浮上してくることはなくなるはず……。
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