愛を込めて極北
 彼は十分に自覚しているようだけど。


 フツーの幸せを求めるような女の人には、彼を理解し、受け入れることは相当難しいと思う。


 こうやって話を聞いたり、写真を見せられると、面白い活動をしていると第三者的には感じられるけれど。


 これがもしも自分の恋人や夫だったとしたら。


 果たして笑顔で支え続けることができるだろうか。


 得体の知れない、インフラもろくに整っていないような遠く北の果ての地方まで毎年出かけていく。


 飛行機を何度も乗り継いで、往復の航空券代だけでも百万円近くになるという。


 しかもマイナス40度以下になることもある、冬になると太陽も登らないような北極圏。


 夏でも雪や氷が残り、一歩間違えば事故などに巻き込まれ、命を失う可能性だってある。


 そしてこの究極の趣味のために、稼いだお金は全て費やされ。


 老後の貯蓄どころか、現在の生活にすら不安を覚えることはあるだろう。


 それら困難を承知で、黙って見送ることができる人は……相当心の広い人だと思う。
< 34 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop