愛を込めて極北
***


 「桜坂さん」


 氷点下のバーベキューを終え、その後湖畔で開催中の「氷濤(ひょうとう)まつり」のイルミネーション撮影会も無事終了。


 夜も更けてきたフリータイムは、隣接するホテルの温泉が無料で使用可能なため、そこを利用する参加者が多かった。


 歩いて数分。


 響さん、桃ちゃんと女子三人で温泉に入っていたものの、私があまりにのんびり浸かっていたため、他の二人は先にコテージに戻ってしまった。


 わずか数分とはいえ、ところどころに街灯があるだけの帰り道は物寂しく……寒い。


 気温が下がってきているため、空の星がやたらとぎらぎら輝いている。


 男性参加者も何人か温泉を利用しているし、きっと誰かと遭遇するだろうと楽観視していたところ。


 不意に背後から呼び止められ、振り返るとそこにいたのは主催者楠木。


 ちょうどお風呂上がりのタイミングが重なったらしい。


 「一人でどうしたんですか。他の女子は?」


 「私があまりに長風呂だったから、先に戻ってもらったんです」


 「大した距離ではないとはいえ物騒だ。一緒に戻りましょう」


 コテージまで一緒に歩くこととなった。
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