愛を込めて極北
 「北極圏に行くことができたら、星空を見てみたいです」


 「日本から見るのとは全然違って、面白いですよ。北極星が信じられないくらい高い位置にあって、北斗七星やカシオペアが地平線からかなり離れていて。寒さをこらえてじっと見上げていると、北極星の周りを星たちが回っているのが手に取るように分かって、つい見続けてしまうんです」


 「緯度が高くなると、逆に南天の星々は見られなくなるんですよね」


 「例えばオリオン座なんかは、上半身しか見えなかったりしますし、さそり座は全く見られなくなります。長く向こうに行ってるとそういう面でも寂しくなったりしますね」


 極地の夜空を彩るといえばオーロラだけど、緯度が高くなりすぎると見えにくくなるらしい。


 オーロラ観光で有名な、カナダのイエローナイフなどは北緯60度ちょっと。


 それ以北の北極圏では、なかなか見られないらしい。


 しかも天気が悪いことが多く、星すらも見られない夜が続いたり……。


 「星が見える夜は、やっぱり勇気をもらえるんですよね。角度や見え方は異なっても、根本的には日本と同じ星たち。この夜空は日本へと繋がってる、同じ夜空を見上げてるんだって改めて感じるんですよ」


 そして深呼吸をすると、ちょうど夜空を流れ星が横切った。


 コテージはもうすぐそこだ。
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