愛を込めて極北
 ……撮影会終了後はほぼフリータイムで、近隣施設の温泉を利用する参加者が大部分。


 温泉を満喫するとコテージに戻り、夜の11時までは団らんタイム。


 お酒を飲みながら楠木の旅行の話をみんなで聞いていた。


 主な内容は、次の旅について。


 今年の初夏に再び、極北に向けて出発するという。


 カナダ極北諸島、例のキングウィリアム島の西海岸を、写真を撮りながら歩いてみる予定と。


 「次が十回目になるんです」


 ……毎年似たようなルートで似たような場所に出向いていて、飽きたりしないのかとも思ったけど。


 「毎回毎回何らかの新発見があるので、飽きるなんて絶対にあり得ないんですよ」


 もはや極北の地は第二の故郷と化していて、毎年春が来る頃になると「行かなくちゃ」といった思いに駆られるという。


 「行く、というより戻る、と表現したほうが、しっくりくるんですよね」


 戻るべき場所……。
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