愛を込めて極北
 それらの大部分は行き止まりだったり、未舗装道路で通行困難だったりで結局退却を余儀なくされたり。


 徒労に終わることのほうがはっきり言って多いのだけど。


 それでも謎のルートがあれば、どこまで通じているのか、どこまで行けるのか確かめてみたくなる。


 「こういうのがかつて北西航路に何度も挑んでは失敗し、多くの死者を出してもへこたれずについには航路を見つけ出した人たちのモチベーションだ」


 よく分からない理論を力説し始める。


 「もうすぐ雪も溶けて、ろくに除雪されない林道も走行可能になる。また近道探ししなくちゃな」


 立派な4WDの車を所持しているため、未舗装道路を走行することにもあまり抵抗がないようだ。


 と思えばソファーに寝転んで、両手サイズの地球儀を手に取りずっと眺めている。


 「このグリーンランド見てみろ。小さいだろ? 壁に貼ってあるメルカトル図法の地図と比べてみろ。大きさ全然違うから」


 「メルカトル図法の地図は、両極地に近付くにつれて面積が巨大化しますよね。丸い地球を平面で表す以上、仕方のないことですが……」


 壁の地図ではキングウィリアム島は北海道と同じくらいのサイズだけど、実際は四国よりも小さい島らしい。


 「あんな小さい島に、まだまだフランクリン隊の末路に関する謎が残されてるんだ。雪と氷に覆われて。行くたびに何か見つけたような気持になるんだ」
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