愛を込めて極北
 ……が、とある祝日。


 響さんは学校行事のため欠席となり、事務所には私と男子大学院生一人の日が発生した。


 まめにメールやファックスのチェックをし、コピーをまとめていたところ……。


 「桜坂。これからちょっと付き合ってくれ」


 焦った口調で楠木が頼み込んできた。


 「え、どこにですか」


 「最終的には、ドラッグストアで栄養補助食品のバーゲンやってるからその買い出しなんだけど」


 「ドラッグストアでバーゲン?」


 正直、どうして私がそんなのに同行しなければならないのか疑問だった。


 一人では買い切れないくらい買い込むつもりなのだろうか。


 それとも一人何個までとか、購入個数制限でもあるとか?


 「……荷物持ちでしょうか。だったら私なんかより」


 ひょろひょろしていて頼りなさそうだけど、それでも男女差があるため私なんかよりそこにいる男子大学院生のほうが荷物持ちとしては役に立ちそうに見えた。


 にもかかわらず、


 「いや、桜坂じゃないとまずいんだ」


 あくまで私を名指しし続ける。
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