仁と私のストーリー
出会いのキッカケ…仁と私のストーリー①
仁丹…。

それは彼のあだ名…。

彼らの世代では有名人…。

なぜなら彼は現役の暴力団だから…。

私は彼と出会って初めて経験した事。
人間関係が広がった事。
心の温かさを伝えてくれた事。

職業柄は世間に背いているけれど、わたしは彼と共に過ごせる日々を幸せに思う。
そして、私は彼と出会えなければ人生どうなってたか分からなかった程、どん底だった。
今があるのは彼のお陰だと感じています。
彼と私のストーリーが始まり、それと同時に私は母親ではなく女を選んだ。

「 」…良子
『 』…仁
《 》…ゲスト



    

    


2014年12月暦は…師走
世間では年度末の準備に入っているなか、私は親との同居に上手く行かず次女を引き連れ突発的に家をでました。
住む家も、仕事も何もないまま家を飛び出しました。
路頭に迷う日々を過ごす覚悟をした瞬間、昔馴染の知人より連絡がありました。
住み込みで子連れでも働き口があると言われ、私にとっては好条件の話だと思いすぐ返答をしました。
そして、仕事内容を聞きに名古屋市まで走りました。
すると知人は

《身体張る仕事はできるか?》

私は

「どんな仕事でもやるよ」
「私にとっては文句のない環境だし、とにかくまとまったお金が欲しい」

そう答えると知人は淡々と話始めました。

《あるおばあさんの介護ではなく保護だ》
《息子から財産を奪われる環境から救って報酬をもらう》

あるようでないような奥の深い話にすがるつもりで仕事に就きました。
そんな矢先に知人からご飯を誘われ知人宅に行きました。
そこで出会ったのが今の彼…。

仁丹でした。

優しそうなおっとりした感じで、現役の暴力団には私の印象では感じなかった。

何となく世間話から番号を交換し、初めは仁が

『軽く遊べる女性を紹介してくれやん?』
『正月限定でいいから』

それを聞いた私はちょっと引いてしまい曖昧な返答をした。
それから聞きたい事や仕事の取り次ぎの話やらで、ちょくちょく連絡がくるようになった。
年末 も近い頃、仁と電話をした。

『正月の事やけど、良子ちゃんが俺と過ごさへん?』

「私?」

『何か予定ある?』

「今の所予定は立ててないけど…」

『俺と過ごすのは嫌?』

その時の仁の印象が悪くなかったし、すごく心の暖かさを感じる人だなと好感をもっていて、一緒に過ごすのも悪くないなと思いました。
だから、断る理由がなかった。

「予定立てておくよん」

とOKの返事をした。

仁は返事をした日から毎日連絡をくれるようになった。
何も用事はないけれど、仕事が終わると仁と待ち合わせをしてぶらぶらと時間を過ごした。
一緒にいる時間が増えてくたびに仁の存在が大きくなっていくのが自分で分かった。
それに何よりも隣にいる居心地が凄く良かった。
仁も何気に私に興味を持ってるのが私に伝わった。

この頃の仁は凌ぎに詰まっていたようで、いつも弱気な気持ちを私に打ち明けていた。
自然と私は力になれる事があるのなら協力してあげたいと思った。
きっと私はすでに仁の心に入り込んでいたんだと今はそう思う。


大晦日…。

私は昼頃まで仕事にもがいていた。
本当ならば私の仕事の任務は休みを取れる状況ではなかったのだけれど、2日間だけ頂き仁との約束の時間を待った。
仁はこの日、組の行事で年越しをする事になっていたのでいつ身体が空くのかは未定だった。
最初に連絡があった時は

『早く帰れるかもしれへん』
『この後の予定がある事を本部長に話したら親父さん(組長)に予定の事を言ったら帰れるようにできるんじゃない?って言ってくれたから早い時間でも出れる?』

「いつ言われても大丈夫なようにスタンバイはしておくよ」

『定期的に連絡するわ。電話でてな?』

「分かったよ。電話待ってるわ」

その後仁は、何度も連絡してきてまだ帰れない事を逐一私に伝えてくれた。
仁はその度に

『ごめんな。ちゃんと待っててな。ほんとにごめんな』

と何度も謝ってくれるので大晦日を本当に私と過ごす事を楽しみにしていてくれた事が伝わった。
電話でごめんな…。と謝り
メールでごめんな…。と謝る。

そんな仁に私は

「ずっと謝ってばっかりじゃん。そんなに謝る事じゃないし、私は終わるのを待ってるから大丈夫だよ」
「そんなに気にせんといて」

そしてまた仁は

『うん。ごめんな』

私は何度も笑ってしまった。
仁は子供のまま大人になった、少年の心を持ったような人で、見た目は味のついた現役の人…。
中身は暴力団には向かない人情味を持った人。
そのイメージが私の中にインプットされた。
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