ようこそ!!青蘭高校へ!!
● 雅光・side ●







『 人を殺したらしい 』









これは、ずっと前に聴いた藤の噂。



沙良には そのことを伏せて言った。



藤とは生徒会に入った時からの付き合いだ。



でも いまだに生徒会長と副会長… それだけの間柄。



まさか 今回、沙良の家に泊まり、藤の意外な一面がどんどん見えてくるとは…



誰にでも優しくクールなイケメン。


頭脳明晰で文武両道、絵に書いたような男。



でも、どこか陰があった…



いや…




闇があった。



藤のどこか一線を引いた付き合い方はそのせいかもしれない。


でも、俺は一緒に生徒会をやるからには仲良くなりたかった。



だから… 名前で呼んだ。




でも…




「太輔、これさ… 」


「やめてくれ!!」




え?




「あ… ごめん、その… 名前で呼ばないでくれ」



俯いたその表情は、明らかに嫌そうで悲しそうだった。



「嫌なのか?名前で呼ばれるのが?」








「ああ… 呼ばれても返事はしない、すまん」




返事をしない…




「何で?」


「嬉しくて 嬉しくない名前だから」



嬉しくて 嬉しくない名前?


どういう意味だ?



「だから 悪い、二度と呼ばないでくれ」



苦しそうに言うと藤は空を見つめた。








その後、従兄弟である一樹に気になり聴いてみた。



でも 答えは同じ。




「トラウマがあるから 絶対に呼ばないでやって、ごめんな」




トラウマ…




心的外傷でもあるんだろう… そんなことも考えた。



そんな時、藤の出身中学の奴らから聴いた噂。




『 人を殺したらしい 』… と。




真実はよくわからない…



でも、おそらく このことと名前のことは関係していると俺は思った。



一樹も一切話そうともしない。




俺も聞かない…




でもな、藤…




俺は、お前は友達だと思ってるから。




森と同じ、大切な親友だと思ってるんだ…




だから…





だから いつかは話してくれよな… 藤。




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