愛しの残念眼鏡王子
そう思い、ユウのリードを外し、買ってきたアルコールをテーブルの上に置いて、長い髪をひとつに束ねた。


「じゃあ先に準備しておいた方がいいですよね。お野菜やお肉は中ですか?」

もう何度も訪れている専務の自宅。

そしてバーベキューも飲み会のたびに開いているから、なにを準備したらいいのか分かっている。

みんな来ていないなら先に準備を進めておこうと思い、専務に声を掛けたんだけど……。


なぜか専務はなにか言いたそうに、しどろもどろになりながら激しく視線を泳がせていた。

「……専務?」

みんなにからかわれると、専務はいまだに大きな反応を見せる。

でも今日はちょっとおかしい。


手を止め、専務の元へ歩み寄ると、まるで怯えた動物のように身体を震わせた。

「ごっ、ごめん! いや、あのっ……! 違うんだっ」

よほどテンパっているのか、無意味に謝ってくる。


「本当にどうしちゃったんですか? また皆さんになにか言われたんですか?」

心配になり尋ねると、専務は瞼をギュッと閉じて、両手で何かを勢いよく前に差し出してきた。
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