愛しの残念眼鏡王子
「こ、これっ! 受け取ってください!!」

「――え」


大きく頭を下げて差し出されたもの。――それは小さなケースだった。

「それでそのっ……!」


いまだにテンパる専務。

けれど勢いよく頭を上げ、大きく深呼吸をすると顔を真っ赤に染めて私を見つめて言った。


「香川光希さん……! 俺と結婚してください!!」

「え……えっ?」


突然のプロポーズに驚きを隠せない。

専務同様テンパってしまう。

そんな私に専務は気持ちを伝えてくれた。


「俺っ……小野寺さんに振られてから、ずっとこの先恋愛できないって思っていたんだ! でも香川さんと出会えて、こんな自分のこと好きになってくれて怒ってくれて。……変わりたいって思った。香川さんにとって、たったひとりのヒーローになりたいって……っ」


「専務……」

彼らしい不器用なプロポーズに、次第に視界がぼやけていく。

だって夢みたいだから。

専務が私にプロポーズしてくれるなんて。
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