愛しの残念眼鏡王子
思わず一度給湯室から事務所の様子を盗み見てしまう。

すると松田さんは眉間に皺を寄せて、いまだにパソコンと格闘中。


「どうしたの、光希?」

不思議そうに私を見つめる一郎さんの元へ戻り、そしてそっと彼の背中に体重を預けた。


「え、みっ、光希っ!?」

途端に彼は身体を震わせ、声を震わせた。

そんな反応もまた愛しくて、胸がキュンと鳴ってしまった。


「少しだけ一郎さん補充させてください」

彼のぬくもりを感じたくて頬を背中に寄せる。

すると背中越しでも伝わってくる一郎さんの鼓動。

それが心地よくて、そっと瞼を閉じた時だった。


「あ、あぁっ!!」

よほど動揺していたのか、彼の手元から茶葉が入った筒が落ちていく。


一郎さんはどうにか掴もうとしたけれど、それは叶わず派手に床に茶葉が散らばてしまった。

その様に半べそ状態の振り返った彼と目を合わせ、思わず笑ってしまった。
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