愛しの残念眼鏡王子
「あのさ……香川さんはその……うちで働いていて、困ったことというか、その……嫌なこととか、あったりするのかな?」

「え?」

突然の質問に驚いてしまうと、途端に専務は足を止め慌て出した。


「いやっ! 違うんだっ!! 決して探りを入れているわけじゃなくてっ……!」

両手を顔の前でブンブン振る彼の姿に、目が点状態に陥ってしまう。


「みっ、みんなにどうして香川さんが飲み会に参加してくれないのか、聞き出してこいって言われたわけじゃないからねっ」

念を押すように言われても……。


専務はテンパりすぎていて、気づいていないようだ。

言ってはだめなことをすべて言っちゃっているという、最悪な事態に。


本当に専務は正真正銘の、男性版ドジッ子だ。

いまだに目の前で必死に弁解している専務。

そのあまりの必死な姿に、口元は緩んでいってしまう。


だめだ、笑ってはいけない。
専務は自分で気づいていないんだから。
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