愛しの残念眼鏡王子
癒しの特効薬
一企業の専務という肩書きだけで、誰もがちょっぴり興味を持ったり、憧れたりするもの。


おまけに三十代で独身! ともなれば、女子は黙っていても寄ってくるものかもしてない。

だけど私が勤める会社の専務は、一味違うんだ。



「光希ちゃん、ごめん。物品の計算お願いしてもいいかな?」

「わかりました」


たったひとりの先輩事務員である松田さんから書類を受け取り、パソコンと向かい合う。

カタカタと規則正しいリズムで数字を打ち込んでいくと、隣の席の松田さんは手を止めて覗き込んできた。


「相変わらず光希ちゃん打ち込むの速いわね。私三人分の仕事をしちゃっているわよ?」

「ありがとうございます」


ぎこちない笑顔を向け、再び数字と向き合う私、香川 光希(かがわ みつき) 28歳。
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