愛しの残念眼鏡王子
だけどどこへ?

婚約者である部長の娘さんは犬が苦手らしく、ユウも置いていってしまった彼。

彼の忘れ形見となってしまったユウだけど、私にはユウのいない生活など考えられなかった。

むしろ彼にユウを引き取りたいと言われても、拒否していたと思うほど、愛情を抱いてしまっていたから。


次の家を探すも、なかなか都内で職場からも近く、ペット可能なお手頃な物件は見つからなかった。

別れても会社に行けば、嫌でも彼の噂話を耳にし、そのたびに自分は惨めな気持ちに陥っていった。


付き合い始めた当初から、私たちの関係は会社には内緒にしていた。

お互い周囲に騒がれるのは好きじゃなかったし、噂されることにも抵抗があったから。


けれどあの時の判断は間違っていなかったと思う。

私と彼が四年以上付き合っていたことは、誰にも知られていない。

部長の娘さんとの縁談のために、私は捨てられたんだって嫌な噂をされずに済んだのだから。


でも惨めに思うことには、変わりなかった。
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