愛しの残念眼鏡王子
恋なんて、しなければよかったって。

好きにならなければ、こんなに辛い思いをしなかった。

彼と同棲をしなければ、もしかしたら今もこの先もずっと一緒にいられたかもしれない。

あの日、先輩の誘いを断って飲み会に行かなければよかった。

彼と出会わなければよかった。


沢山の後悔に襲われ、私の心はぐちゃぐちゃになってしまい、すべてから逃れるように会社を退社し、住み慣れた土地から離れた。


ユウと一緒に。


* * *


「うわぁ、綺麗な星空」

定番の散歩コースである近所の公園で一休みしていた時、ふと空を見上げると眩い星空が広がっていた。


「東京では、こんなにたくさんの星なんて、見ることができなかった」


遮るものがなにもないここでは、空が一段と近く感じることができる。

手を伸ばせば、届いてしまいそうだ。


本能のまま手を伸ばしてみるけれど、当然ながら星を掴むことなんて出来ない。
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