愛しの残念眼鏡王子
思い当たる節は、この前の金曜日だ。

無理に私が飲み会に参加したくない理由を聞くこともなく、いつでも話を聞くよと優しく声を掛けられた日からだ。

あの日から私は、専務の素直でちょっぴり不器用な優しさに、ときめいてしまっている。


「この際だから香川さんもどう?」

「え?」

首を傾げると、専務は目尻に皺をたくさん作って笑った。


「一緒に少しさぼっちゃおうよ。芝生の上で大の字になって寝ると、けっこう気持ちいいんだよ、これが」

そう言うと専務は、宣言通り大の字になって寝転がった。


あぁ、せっかくビシッと着こなしているスーツが……! それに髪の毛もいつもに増してボサボサになってしまっている。

大丈夫なのかな? この後、約束が入っているんだよね?

いらぬ心配をしていると、専務は空を見上げたまま話し出した。


「こうやって空を眺めていると、色々なことがスッキリしたりするんだ。……たまには休息も必要だと思わない?」

寝転がったまま私を見上げ、白い歯を覗かせる彼に、胸がキュンと鳴ってしまう。
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