愛しの残念眼鏡王子
そんな社長だからこそ、専務をここに連れてきたのかもしれないね。


「それとこうも言われた。……無理して専務にならなくていいんだ、どうせお前には期待していないからって。頑張っている息子に言う言葉?って思っちゃったけど、あれはあれで父さんらしい励まし方だったんだよね。……俺の性格、知っているからこそ」


目を細めふわりと笑った彼に、また胸が鳴ってしまう。

やだな、無防備な状態で微笑まれちゃうと、無意識のうちに抱き着きたい衝動にかられてしまう。


なんだろう、この気持ち。
ユウに抱く気持ちに似ているような……。

自分の気持ちに混乱してしまっていると、専務は手招きをした。


「だからほら、騙されたと思って横になってみてよ。……すっごい気持ち良いから」

無邪気な笑顔を向けられてしまうと、これはもうNOとは言えなくなってしまう。

「じゃあ、少しだけ……」


専務との距離を少しだけあけて隣に寝転がる。


すると背後から鼻を掠めるのは大地の匂いと、視界いっぱいに広がる眩しい日差し。

眩しくて一瞬瞼を閉じた次の瞬間、ゆっくりと目を開けると見えたのは雲ひとつない青空。
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