愛しの残念眼鏡王子
視界すべてが水色一色で、なんともいえない気持ちが込み上げてくる。

「どう? すごいよね」

「…………はい」


返事をするのに、ワンテンポ遅れてしまった。

いつも思っていた。

ここに横になってみたら、どんな世界が広がっているんだろうって。

これは想像以上だった。

しばし青空に視線を奪われてしまっていると、隣から優しい声色が聞こえてきた。


「少しは気持ち、軽くなった?」

「――え?」


意外な言葉に思わず隣を見てしまうと、至近距離に専務の横顔があり、硬直してしまう。

けれど専務は空を見上げたままで、今の私たちの距離の近さに気づいておらず、話を続ける。


「ずっと気になっていたんだ。……うちで働き始めた時から香川さん、無理しているんじゃないかなって」

専務……。


「なんとなく、俺と同じなのかなって勝手に思っちゃってさ。……それでずっと気になってた。辛い思いを抱えたまま、ここに来たような気がしたから」
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