愛しの残念眼鏡王子
すると専務はますます嬉しそうに顔を綻ばせる。


やっぱり好きだな、私。……専務のことが。

もう二度と恋なんてしないはずだったのにな。

たった三ヶ月ちょっとだよ? 専務と一緒に過ごした時間は。

それなのに心を奪われてしまった。


寂しい時に優しくしてくれたからとか、一番近くにいた異性だからとか、そんな理由が頭に浮かぶけれど、どれもしっくりこない。


時間とか理由とかいらないよね、人を好きになるのに。

仕方ないんだ、好きになってしまったのだから。

目の前で頼りなく笑うこの人のことが。


「あ、専務も髪の毛に芝生がついていますよ」

「嘘!」


よく見ると、私と同じように専務の髪の毛にもついていた。

くせっ毛の彼の髪。

慌てて両手でガシガシやるけれど、なかなか取れそうにない。

「どう? とれたかな?」
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