愛しの残念眼鏡王子
「社長もびっくりしたんじゃないですか? 面接に来た光希ちゃんの名前を見て」


松田さんの声に、なぜか専務の顔が強張った。

え、私の名前? どういう意味?


けれど松田さんが言っている意味が分からない私は、ただ首を傾げるばかり。


工場内にいるみんなは私たちの存在に気づいていない。

私と専務の話は、続いていった。


「まぁ、な。あの子が退職していって二年後に、同じ名前の子が現れたら、少なからず運命を感じてしまったのかもしれない」


退職していった子? 同じ名前の子? 運命?


社長の口から出たワードに、私の頭の中はますます混乱していく。


「そうよね、美月ちゃんがいなくなって、抜け殻状態だった専務がやっと立ち直りかけた時に、現れたんだもの。……私が専務の母親でも同じことを思ってしまいましたよ。もしかしたら神様が専務に、運命の出会いをもたらしてくれたのかもしれないって」


いつもとは違い、感慨深そうに話す松田さんに、いつの間にか他のみんなもしんみりしてしまっている。
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