愛しの残念眼鏡王子
勤め始めて早三ヶ月。
だけどまだたったの三ヶ月だ。

それでも分かる。専務みたいな反応をすれば、松田さんが余計に面白がるっていうことくらい。


それなのにこの素直な専務様は、毎回毎回、からかわれるたびに同じ反応を見せてしまう。


ふたりっきりになってしまった事務所内は、お湯を沸かす音が響くだけ。

そんな中、専務はわざとらしく咳払いをし私を見据えた。

とっても分かりやすい、引きつった笑顔で。


「えっと……もう、困るよね松田さんには! ごめんね香川さん」

「いいえ、私は別に」


あぁ、なんて不器用な人だろうか。

おせっかいな職場の先輩たちは、独身同士の私たちをくっ付けたがる。


まぁ、最初は仕方ないと思った。

どこにでもあるような話だし、なんせこの会社で独身なのは私と専務だけだもの。
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