愛しの残念眼鏡王子
いくら走行中ライトをつけていたって、突然ユウが飛び出してきたりでもしたら、車は急には止まれないはず。


嫌な考えばかりが頭をよぎってしまう。

どうしよう、このままユウがいなくなっちゃったら。


ずっとユウに会えなくなっちゃったら私っ……!

考えただけで怖くて涙が溢れそうになる。

だめ、泣いている場合じゃない。

しっかりしないと。

自分のせいでユウに怖い思いをさせているんだから。


もしかしたらユウ、見覚えのない場所に行っちゃって、不安になっているかもしれない。


引っ越してきてから、色々なコースで散歩してきたけど、まだ訪れていない場所も多い。――でも、ユウはもしかしたら道を覚えている……かもしれないよね。


先に家に戻っているかもしれない。

全力疾走で自宅へ戻っていく。けれどそこにユウの姿はなかった。


「ユウ……」

どこに行っちゃったの? ひとりで一体どこへ?

遊びに夢中になっちゃっているの? それとも――。

最悪な事態をまた想像してしまい、慌ててかき消すように首を横に振った。
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