愛しの残念眼鏡王子
「もうどこに行っていたのよ。心配したじゃないっ!」

思いっきり抱きしめ、ユウのぬくもりを感じると、安心してしまい涙が溢れ出してしまった。


泣き出した私にユウは「クゥ―ン」と寂し気に鼻を鳴らした。

「ごめんね、目を離しちゃって。……寂しい思いをさせちゃってごめん」

頭を撫でながら謝ると、ユウは私の頬を舐めてきた。


「もう、ユウやめてよ」

くすぐったくて嬉しくて、笑いながら鼻を啜っていると、頭上から安心した専務の声が聞こえてきた。


「よかったね、見つかって」

「あ――」

なにやっているのよ、見つけてくれた専務にちゃんとお礼を言わないと。


慌てて立ち上がり真っ直ぐ彼を見据えた瞬間、目を疑ってしまった。

「え、専務!?」


だって今の専務、全身ボロボロだったから。

唖然としてしまう私に専務は「エへへ」と情けない声を出して、頭を掻いた。
< 89 / 111 >

この作品をシェア

pagetop