愛しの残念眼鏡王子
するとあからさまにがっくり項垂れる専務。


失礼ながら専務のことは、年上とは思えない。

なんていうか……手のかかる弟? みたいな存在と言えばいいのかな?


専務を一言で表せ!と言われたら迷いなくこう言う。
『男性版ドジッ子です』と。


「アハハ、ごめんね最近物忘れが激しくて」

カラ笑いしながら手元も見ずに茶葉をスプーンで掬う専務に、嫌な予感しかしない。


「あっ、あぁっ!!」

そして予感は見事に的中。


手元を狂わせ、それでも必死に落ちそうになった茶葉が入った筒をキャッチしようとしたけど……まるでコントのように専務の頭上に茶葉は落ち、筒が床に音を立てて落ちた。


カラカラと筒が転がる音が止むと、一気に静寂に包まれる。


入社して三ヶ月。
専務のドジっぷりは嫌になるほど目の当たりにしてきた。――でも。
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