愛しの残念眼鏡王子
しゃがみ込み、ユウと目線を合わせる専務。

すると敵対心剥き出し状態だったユウが、少しずつ近づいていった。

あぁ、ユウにも分かるんだね。

専務は優しい人だって。


あれほど歯を食いしばっていたのに、専務に頭を撫でられて気持ち良さそうにしちゃっている。

ユウも私と同じだね。

専務に助けられちゃったんだから。


じゃれ合うふたりと同じように、私もしゃがみ込んだ。

リードを持つ手をギュッと握り締め、専務と向かい合った。


「あの、本当にありがとうございました。……それとこの間は酷いこと言ってしまってすみません」

「香川さん……」


ユウを撫でる手は止まり、専務はジッと私を見つめてきた。

そんな彼から視線を逸らすことなく、自分の想いを伝えていく。


「でもあれは本心です。……専務は自分のこと、低く評価しすぎです」

あの時と同じ言葉を伝えると、専務は照れ臭そうに頭を掻いた。

「……ありがとう」

この前のように否定することなく、専務は嬉しそうにハニかんだ。
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