愛しの残念眼鏡王子
「実はさ、うちでみんなと飲み会やっていたんだけど……その、悪酔いしたみんなに『香川さんにちゃんと謝ってこい』って言われちゃって」

「え、皆さんにですか?」


思わず聞き返してしまうと、専務は気まずそうに頷いた。


「その……大変申し訳ないことにみんなに詰め寄られてしまって。それでこの前、香川さんに言われたことをみんなに話したら、怒られて……」

しどろもどろになりながら話す専務。


「特に母さんに一番怒られたんだ。……香川さんは俺のためを思って言ってくれたんだから、肝に銘じなさいって。ちゃんと自分のダメなところを言ってくれる人、なかなか出会いたくても出会えないって」

「副社長が……」


心がじんわりと温かくなる。

副社長には、私が専務に伝えたかった想いを理解してくれたのかな? ううん、きっとそうだよね。

そうでなかったら、そんなこと専務に言ってくれるはずないもの。


「それで盛り上がっちゃったみんなに、今から香川さん家に行って謝罪して、連れて来いって追い出されちゃって」

そうだったんだ、だから専務はあの場所に……。


「どうしようか悩んじゃっていたけど、でも結果的にはみんなに感謝だね」

そう言うと専務は一度私を見据えた後、ユウの頭を優しく撫でた。
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