愛しの残念眼鏡王子
「みんなに追い出してもらえなかったら、香川さんひとりで不安な気持ちにさせていただろうし、ユウくんを見つけるのに、もっと時間がかかってしまっていたかもしれないから」


胸がギューっと締め付けられていく。

なんて優しい顔をして笑う人だろうか。


街灯に照らされた専務の笑顔は、いつもより数倍優しくて可愛くて。

そしてカッコよく見えてしまう。


おまけに偶然とはいえ、私とユウがピンチの時に現れちゃうんだもの。

「……専務は私にとって、たったひとりのヒーローですよ?」

「…………えっ!?」


突拍子もないことを言い出した私に、専務はワンテンポ遅れて大きな反応を見せた。

相変わらずな彼に、クスリと笑みが零れてしまう。


「だってそうじゃないですか。私とユウがピンチの時、こうやってカッコよく現れて助けてくれたんですから」

「いや、でもたまたまで……!」


謙虚な専務は両手を大きく左右に振り出した。

いつもの彼を目の前にしたら、自然と素直な感情が溢れていく。
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