3ヶ月だけのママ~友達が妊娠した17才の夏~
「本人から、聞いたの?」
「うん。朋絵にはアタシから言っといてって~」
「そっかぁ……」
それじゃあ、少なくとも千奈美本人は自分が妊娠してると思ってるんだ。
もう彼氏とそんなところまでいってたなんて……なんか複雑。
中学の同級生が妊娠しただの、十六歳の誕生日にでき婚した友達がいるだの、そういう話は聞いたりしていた。
私たちの年で妊娠したり結婚したり出産したり……中絶したりって、実はそんな珍しいことじゃない。
でも、それはあくまで友達の友達の話で、私には縁遠くてこんな身近で起こる話じゃなかった。
それなのに……いや、そうでもないんだった。
『さすがのアタシも、同じヘマは二度もしないよ~』
私は食べ終わったお弁当を片付けながら、そう言った啓子をちらりと見る。
「ん? なぁに」
いつの間にか鏡を携帯電話に持ち替えた啓子が、首をかしげて見返してくる。
「なんでもないよ」
私は笑顔を取り繕う。
『アタシも中絶したことあるよぉ。凄い痛くてさ、大変だったー』
前に、友達の友達が中絶したっていう話になった時、いつもと変わらない口調で啓子はさらりと言った。
その時はみんなどう反応したらいいのか分からなくて、軽く流してしまったけれど……
啓子は、中学の時に彼氏の子供を妊娠して、中絶している。
今ではなく過去の話とはいえ、そういう経験をした子がこんなにも身近にいた。
そして今、千奈美が。
全然、遠い話なんかじゃなかった。
おととし結婚した、六歳年上のお姉ちゃんの顔が思い浮かぶ。
そのお姉ちゃんが妊娠の報告をしに来た時は、あんなにも嬉しかったのに……
今の私は、千奈美の妊娠を聞いて沈んでいた。
この違いが、千奈美に酷く悪い気がした。
「…………私っ、千奈美に会ってくる!」
お弁当を仕舞った私は、すっくと立ち上がった。
千奈美は気分が悪いと言って、昼休みと同時に保健室に行ってしまった。
その具合が悪いってのも、つわりとか妊娠のせいなのかな。
そう思うと居ても立ってもいられない。
「朋絵、ちょっと待って!」
階段をおりかけた私のスカートを啓子が引っ張って、引き止める。
「しばらくそっとしておいてやりなよー。アタシも妊娠したって言われただけで、詳しいこと知らないし~。千奈美が自分で言い出すまで、待と」
「…………うん」
私はこくりと頷いて、また啓子の隣に腰を下ろす。
「千奈美、どうするんだろ」
スカートを巻き込むように膝を抱えて、顎を乗せる。
「さあ? 最後に決めるのは、千奈美だからねー」
啓子は携帯電話を仕舞い、足を組んで膝の上で頬杖をつく。
「夏樹くん、だっけ……?」
「千奈美の彼氏ね」
「なんて言ってるんだろう」
「さぁねー」
のんきな啓子の言葉に、私は小さく溜め息を吐く。
その溜め息と同時にチャイムの音が耳鳴りみたいに階段室に鳴り響いた。
昼休みが終わる。
「うん。朋絵にはアタシから言っといてって~」
「そっかぁ……」
それじゃあ、少なくとも千奈美本人は自分が妊娠してると思ってるんだ。
もう彼氏とそんなところまでいってたなんて……なんか複雑。
中学の同級生が妊娠しただの、十六歳の誕生日にでき婚した友達がいるだの、そういう話は聞いたりしていた。
私たちの年で妊娠したり結婚したり出産したり……中絶したりって、実はそんな珍しいことじゃない。
でも、それはあくまで友達の友達の話で、私には縁遠くてこんな身近で起こる話じゃなかった。
それなのに……いや、そうでもないんだった。
『さすがのアタシも、同じヘマは二度もしないよ~』
私は食べ終わったお弁当を片付けながら、そう言った啓子をちらりと見る。
「ん? なぁに」
いつの間にか鏡を携帯電話に持ち替えた啓子が、首をかしげて見返してくる。
「なんでもないよ」
私は笑顔を取り繕う。
『アタシも中絶したことあるよぉ。凄い痛くてさ、大変だったー』
前に、友達の友達が中絶したっていう話になった時、いつもと変わらない口調で啓子はさらりと言った。
その時はみんなどう反応したらいいのか分からなくて、軽く流してしまったけれど……
啓子は、中学の時に彼氏の子供を妊娠して、中絶している。
今ではなく過去の話とはいえ、そういう経験をした子がこんなにも身近にいた。
そして今、千奈美が。
全然、遠い話なんかじゃなかった。
おととし結婚した、六歳年上のお姉ちゃんの顔が思い浮かぶ。
そのお姉ちゃんが妊娠の報告をしに来た時は、あんなにも嬉しかったのに……
今の私は、千奈美の妊娠を聞いて沈んでいた。
この違いが、千奈美に酷く悪い気がした。
「…………私っ、千奈美に会ってくる!」
お弁当を仕舞った私は、すっくと立ち上がった。
千奈美は気分が悪いと言って、昼休みと同時に保健室に行ってしまった。
その具合が悪いってのも、つわりとか妊娠のせいなのかな。
そう思うと居ても立ってもいられない。
「朋絵、ちょっと待って!」
階段をおりかけた私のスカートを啓子が引っ張って、引き止める。
「しばらくそっとしておいてやりなよー。アタシも妊娠したって言われただけで、詳しいこと知らないし~。千奈美が自分で言い出すまで、待と」
「…………うん」
私はこくりと頷いて、また啓子の隣に腰を下ろす。
「千奈美、どうするんだろ」
スカートを巻き込むように膝を抱えて、顎を乗せる。
「さあ? 最後に決めるのは、千奈美だからねー」
啓子は携帯電話を仕舞い、足を組んで膝の上で頬杖をつく。
「夏樹くん、だっけ……?」
「千奈美の彼氏ね」
「なんて言ってるんだろう」
「さぁねー」
のんきな啓子の言葉に、私は小さく溜め息を吐く。
その溜め息と同時にチャイムの音が耳鳴りみたいに階段室に鳴り響いた。
昼休みが終わる。