3ヶ月だけのママ~友達が妊娠した17才の夏~
「なんで、妊娠なんかしちゃったんだろう。なんで夏樹くんに避妊してって言えなかったんだろう。なんで……なんで……なんで、セックスなんかしたのよ!」
泣き叫びながら、千奈美は自分の手を傷つけていく。
私が必死に押さえようとしても敵わないぐらいの力で、千奈美は自分を罰していた。
「なんで、なんで? どうして、わたしはっ……!」
ボロボロと涙を流しながら、骨が折れるんじゃないかってぐらい強く、拳をコンクリートに叩きつける。
何度も、何度も、千奈美の手が血にまみれた。
「わたしはお母さんなんかになりたくなかった! わたしは……わたしは……夏樹くんの彼女になりたかっただけなのに!!」
夏樹の野郎。
思わず殴ってしまうぐらい私は大嫌いな奴なのに、千奈美はまだこんなにも思ってる。
好きで好きでたまらなくて、こんな事態を引き起こしてしまうぐらい大好きだったんだ。
言いたいことも言えなくて、しなきゃないけないことも出来ないような、歪な関係だったのに……
それでも。
千奈美もいけなかったのかもしれない。
いけなかったんだと思う。
それでも私は千奈美の友達だから、千奈美の味方をしてしまいたくなる。
これで千奈美も夏樹の野郎が好きじゃなかったとか言ったら、私は千奈美にも怒った思う。
好きでもない人とセックスして、好きでもない人の赤ちゃんを妊娠する。
そんなの、千奈美も赤ちゃんももっと不憫だ。
でも、そうじゃない。
千奈美が夏樹の野郎を好きでいればいるだけ、私は夏樹が嫌いになる。
あんな野郎。
千奈美と同じぐらい、夏樹も千奈美のことを好きでいてくれたら……
そしたらきっと、こんなことにはならなかった。
夏樹の野郎にも嫌われたくないって気持ちがあったら、こんな簡単にセックスしたいとか生でしたいとか言えなかったはず。
好きだと言ってくれる女の子にちゃんと思いを返せないなら、最初っから断ればよかったんだ。
ただの性欲の捌け口みたいにするなんて、絶対に許せない。
大切に出来もしないのに、なんで告白に頷いたりしたのよ。
夏樹の野郎!
でもだからこそ、わからないよ。
千奈美、どうしてあんな野郎をこんなに愛せる?
こんなことになってまで、どうして……
それこそが、千奈美と夏樹の野郎との関係が歪な物だったという証明のようで悲しかった。
依存とか、そんな言葉が脳裏を過ぎった。
「朋ちゃん、わたし……どうしたらいいんだろう」
ぐったりと、千奈美は私にしな垂れかかるように抱き着く。
血まみれの手が私の服を汚す。
私は、なんにも答えられなかった。