3ヶ月だけのママ~友達が妊娠した17才の夏~
「でも、こんなとこにいたら、熱中症になっちゃうよー」
危機感のない啓子の声に、私のほうに危機感が芽生えた。
「そうだよ! 大丈夫?」
ぎゅっと、千奈美の手を握る手に力が入る。
心なしか、熱い気がする。
二人分の命を抱えているのかもしれない千奈美の手。
そう思うと、居ても立ってもいられなくなった。
「冷たいジュース買ってくる!」
私は千奈美に駆け寄ったときと同じ勢いで、自動販売機に走っていく。
たしか、この公園のブランコの横にあったはず。
しばらく走ると千奈美と啓子が視界から消えて、代わりに自販機が見えた。
その前で立ち止まり、鞄から財布を取り出すと、後ろから近づいてくる足音がした。
振り返ると、啓子がいた。
「千奈美と待っててよかったのに」
「うーん……」
珍しく、歯切れが悪い啓子の気持ちがちょっとだけ分かる気がした。
赤ちゃんと一緒に、十七歳で妊娠するという大きな問題を抱えた千奈美。
その千奈美に友達として向き合う重さを感じていた。
友達の友達じゃない。
昔々の話でもない。
自分の身に起きたことではなくても、あまりに重い赤ちゃんの命。
逃げ出したくなるような気持ちに、千奈美に心から謝りたい。
謝ったって、この気持ちからは逃れられないとしても。
過去に同じ問題に直面をした啓子はもっと重く感じているだろうし、張本人である千奈美なんて本当に命の重みを抱えている。
弱いよ、私は。
重みを感じる資格さえないぐらいに。
「あ、アタシも半分払うよ」
私が財布を持っているのを見て、啓子も財布を出してくる。
お金を出し合って、スポーツドリンクを買った。
「あ。でも、体冷やすのもダメだよね?」
「一気飲みとかしなきゃ、大丈夫でしょ~」
「そっか。じゃあ、そう言っとこ」
私は千奈美にどう接したらいいかもわからないまま、妊婦である千奈美を案じる。
「もどろうか」
それでも、本当に逃げることだけはしたくなかった。
「はい、千奈美。私と啓子のおごりだよ」
「ありがとう」
戻った私たちに、千奈美はわずかな笑みを浮かべてスポーツドリンクを受け取る。
でも、私が一気飲みしないように言うまでもなく、千奈美はそれを開けようともしなかった。
俯く千奈美は、思いつめているようだった。
「あ、そうそう。あのこと、朋絵に伝えといたからね~」
千奈美が思いつめているといえば、『あのこと』しかない。
その『あのこと』について、啓子があっけらかんと言い放つ。
「うん。ありがとう……ごめんね、朋ちゃん。本当は、朋ちゃんにもきちんと伝えたかったんだけど」
「ううん! いいよいいよ、それっくらい」
啓子だけ千奈美から直接聞かされていたことに、ちょっぴり疎外感を感じていた。
でも……
私はベンチに座った千奈美の前にしゃがみ込んで、素直な気持ちを真っ直ぐに伝える。
「打ち明けてくれて、ありがとう」