3ヶ月だけのママ~友達が妊娠した17才の夏~
第19話「三ヶ月だけのママ」
「あれ、俊輔くんも?」
千奈美が流産した数日後。
私と啓子は千奈美から会いたいと連絡を受けて、再び待ち合わせをして千奈美の家に行くことにしていた。
けれど、あの日と違って待ち合わせ場所に来たのは啓子だけじゃなかった。
啓子の隣に俊輔くんがいることに、私は首を傾げる。
「おれは啓ちゃんを送りに来ただけだから。千奈美ちゃんの家に着く前に、帰るよ」
「そうそう~、いないものと思ってねー」
啓子の言葉に俊輔くんがそこまで言ってないと突っ込んで、思わず笑ってしまう。
俊輔くんは、啓子が心配で一緒に来たんだろうな。
もしかしたら、帰りも迎えに来るのかもしれない。
中絶と流産。
似ているようでまったくの真逆。
それでも、啓子はいろいろ気持ちが揺れ動いたりもすると思う。
啓子を真ん中に、三人で千奈美の家に向かって歩き始める。
「あれ~、あれって夏樹じゃないー?」
駅から歩き初めて十分ぐらいしたころ、啓子が公園の前で立ち止まった。
公園の中で、誰かがたそがれている。
「本当だ……」
私はその人影を見て、目を丸くした。
人気のない寂れた公園のブランコに腰掛けて、膝の上で指を組んで俯いている。
顔は見えないけど、あのシルエットは夏樹くんで間違いない。
「夏樹くんて……千奈美ちゃんの彼氏っていう?」
「そうそう~。その夏樹―」
夏樹くんも、千奈美のお見舞いに来たんだろうか。
でも、それならどうしてこんな所に……
行く勇気が出ずにいるのか、それとも名残惜しくて帰れないでいるのか。
千奈美が流産して、夏樹くんは今どんな気持ちでいるんだろう。
ガッカリした?
ホッとした?
悲しい?
それとも、喜んでる?
「…………啓ちゃん。おれ、ここまででいい?」
俊輔くんはじっと夏樹くんの方を見たまま、啓子にそう言った。
その横顔は、真剣だった。
「もちろんいいよー、ありがとね~」
「うん、バイバイ。気をつけて行ってきてね。朋絵ちゃんも」
視線を私たちに戻した俊輔くんが、ひらりと手を振る。
「バイバイ~」
啓子が手を振り返して、私は会釈する。
私たちが背を向けようとすると、俊輔くんは公園を仕切る低い柵を飛び越えて行った。
真っ直ぐに、夏樹くんに向かって走っていく。
「行こっか~」
「うん……」
私は俊輔くんと夏樹くんが気になりつつも、啓子に促されて歩き出す。
俊輔くんは夏樹くんと面識がないはずだけど、どうするつもりなんだろう。
もしかして、実は知り合い?
そんなまさか。
啓子は俊輔くんがどうするつもりなのか、分かっているのかな?
私みたいに二人を気にする素振りを見せずに、千奈美の家へ向かう。
「啓子、待ってよ!」
私は啓子に置いて行かれそうになって、慌てて追いかけた。