3ヶ月だけのママ~友達が妊娠した17才の夏~
第21話「そして」
元気な赤ちゃんを産んでください。
って、妊婦さんにかけられる定番の言葉。
でも、妊婦さんにそんなことを言ったって、妊婦さんにどうにか出来る範囲の出来事じゃない。
産んでくださいって言われなくても、元気に生まれてきて欲しいに決まっているし、元気に生まれてこなかったら元気に産まなかった妊婦さんのせい?
そんなことない。
元気を願う全ての人の意思を無視して、なにが起こるか分からないのが命だ。
全ては神様の意思次第?
運命なんてクソ食らえ。
「ああ、朋絵! お母さん、今からお姉ちゃんのところに行ってくるから!」
夏樹と俊輔くんの話がなかなか終わりそうにないからと、啓子は俊輔くんに先に帰るからとメールを送っていたらしい。
それを受けて、私は啓子と先に帰ってきていた。
駅で啓子と別れたけど、道中私は啓子と俊輔くんの期間限定のお付き合いが気になりつつも何もきけないでいた。
そして今、家の玄関を開けた私は今まさに出かけようとしているお母さんとはち合わせていた。
「後よろしくね!」
「ちょっと待って、お姉ちゃんがどうかしたの?」
出て行こうとするお母さんを引き止める。
今朝、千奈美の家に出か掛ける時に私を見送ってくれたお姉ちゃん。
今夜には旦那さんが帰ってくるからと、もう家に帰っているはずだった。
そのお姉ちゃんの元に、今からお母さんが行くという。
慌てた様子のお母さんと相俟って、千奈美を救急車で運んだ日のような不安が広がっていった。
「破水したって!」
一瞬だけ立ち止まったお母さんは私を振り返ると、そう一言だけ言い残して家を飛び出して行った。
「破水……?」
破水がどういうものなのか、まだ私はよく知らなかった。
実際はそうじゃないのかもしれないけど、なんとなくテレビのイメージではあんまりよくないことのように思えた。
なにより、今のお母さんの慌てよう。
お母さんが鍵も掛けずに出て行った扉がゆっくりと閉まり、音を立てる。
私は暗い玄関に一人取り残されて、茫然としていた。
お姉ちゃんの出産予定日は、まだ一ヶ月ぐらい先のはずだった。
それなのに、破水って……
全身の血の気が引いてしまって、私はその場にへたり込んでしまった。
お姉ちゃんと赤ちゃんが元気であるように、私はただ祈るしかなかった。
千奈美。
啓子。
俊之くん。
夏樹の野郎。
お姉ちゃん。
お姉ちゃんの旦那さん。
破水した赤ちゃん。
それぞれの家族。
それぞれの友達。
そして、私。
みんなの思いを乗せて、時は流れていく。
一年後。
私は高校三年生になっていた。
って、妊婦さんにかけられる定番の言葉。
でも、妊婦さんにそんなことを言ったって、妊婦さんにどうにか出来る範囲の出来事じゃない。
産んでくださいって言われなくても、元気に生まれてきて欲しいに決まっているし、元気に生まれてこなかったら元気に産まなかった妊婦さんのせい?
そんなことない。
元気を願う全ての人の意思を無視して、なにが起こるか分からないのが命だ。
全ては神様の意思次第?
運命なんてクソ食らえ。
「ああ、朋絵! お母さん、今からお姉ちゃんのところに行ってくるから!」
夏樹と俊輔くんの話がなかなか終わりそうにないからと、啓子は俊輔くんに先に帰るからとメールを送っていたらしい。
それを受けて、私は啓子と先に帰ってきていた。
駅で啓子と別れたけど、道中私は啓子と俊輔くんの期間限定のお付き合いが気になりつつも何もきけないでいた。
そして今、家の玄関を開けた私は今まさに出かけようとしているお母さんとはち合わせていた。
「後よろしくね!」
「ちょっと待って、お姉ちゃんがどうかしたの?」
出て行こうとするお母さんを引き止める。
今朝、千奈美の家に出か掛ける時に私を見送ってくれたお姉ちゃん。
今夜には旦那さんが帰ってくるからと、もう家に帰っているはずだった。
そのお姉ちゃんの元に、今からお母さんが行くという。
慌てた様子のお母さんと相俟って、千奈美を救急車で運んだ日のような不安が広がっていった。
「破水したって!」
一瞬だけ立ち止まったお母さんは私を振り返ると、そう一言だけ言い残して家を飛び出して行った。
「破水……?」
破水がどういうものなのか、まだ私はよく知らなかった。
実際はそうじゃないのかもしれないけど、なんとなくテレビのイメージではあんまりよくないことのように思えた。
なにより、今のお母さんの慌てよう。
お母さんが鍵も掛けずに出て行った扉がゆっくりと閉まり、音を立てる。
私は暗い玄関に一人取り残されて、茫然としていた。
お姉ちゃんの出産予定日は、まだ一ヶ月ぐらい先のはずだった。
それなのに、破水って……
全身の血の気が引いてしまって、私はその場にへたり込んでしまった。
お姉ちゃんと赤ちゃんが元気であるように、私はただ祈るしかなかった。
千奈美。
啓子。
俊之くん。
夏樹の野郎。
お姉ちゃん。
お姉ちゃんの旦那さん。
破水した赤ちゃん。
それぞれの家族。
それぞれの友達。
そして、私。
みんなの思いを乗せて、時は流れていく。
一年後。
私は高校三年生になっていた。