料理音痴
……焼き鮭。
温泉玉子。
ほうれん草のおひたし。
具のたくさん入ったお味噌汁。
つやつやのごはん。

「……」
 
テーブルについた坂下が、突っ立ったままの私を見つめる。

目の前には二人分の食事。

座れ、そういわれた気がしてその前に座った。

「……」
 
手を合わせると、坂下は無言で食べ始めた。
一瞬、悩んだけど、食べていいのだろうと箸を掴んで食べ始める。

「……おいしい」
 
お味噌汁はインスタントじゃなくて、ちゃんとだしから取ってあった。
普段食べないお野菜がいっぱい。
ごはんは買ってきたのと違って、炊きたてでほかほか。

……こんな、誰かの作ったごはん、久しぶり。

料理音痴とめんどくさがりが災いして、私の普段の食事はコンビニ弁当だ。
実家にも滅多に帰らないから、手料理なんて食べる機会はほとんどない。
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