料理音痴
それから。
坂下の言葉に甘えて、時々ごはんを食べに行った。

嫌いなものだけ聞かれて、あとはいつもおまかせ、だ。
なにが出てくるかはその日のお楽しみ。

一度、いつも作ってもらうのは悪いので手伝ってみたのだけれど……。

「……二度と料理するな」
 
珍しく口を開いた坂下に、そういい渡された。
 

今日も坂下のうちで、ごろごろソファーで雑誌を読みながら、ごはんができるのを待ってる。

……捲られた袖から覗く、たくましい腕。
長身の坂下によく似合う、黒のエプロン。
料理してる、真剣な顔。

毎度のことながら、ドキドキする。

……もう誤魔化しようがないけれど、私は坂下のことが好きになってた。

奴は無口だけど、それは決して嫌じゃない。
むしろ、居心地がいい。
ずっと一緒にいたい、とか思ってしまう。

まあ、胃袋をがっちり握られてるからというのもあるけど。
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