無糖バニラ【番外編】
*
帰り道は、手を繋いでふたりで並んで歩いた。
「翼って、いつからあたしのことが好きなの?」
「なんでそんな話だよ」
「実は、割と前から気になってたから」
「知らね」
「もー、そうやってまた」
適当にあしらわれるものだとばかり思っていたのに。
「覚えてるわけないだろ。気づいた時には、とっくに好きだったんだから」
これだから、この幼なじみは苦いのか甘いのか分からない。
ふたりで少し黙って、先に口を開いたのはあたし。
「……翼」
「ん?」
「メリークリスマス」
赤い顔を見られたくなくて、うつむいて言うと、翼はあたしの頭に手を伸ばして、ポンッとひとつ撫でた。
「メリークリスマス」
それは、甘い甘いバニラの香りがした。
END