つなぎたいから
フロアの外にある給湯室へ向かった。
気分転換を兼ねてマグカップを洗う。


「すげぇため息」


あきれたような声。
振り向くと同期の不破くんがいた。

定時も過ぎており、不破くんはネクタイを弛めすっかりオフモード。
あたしはポケットからハンカチを取り出して手を拭いた。

通路を並んで歩く。
不破くんは喫煙スペースから戻ってきたのだろう、タバコのニオイがした。


「帰るのか」

「ううん、まだ。来月からのイベントのチラシが出来てなくて。不破くんは?」

「オレもまだ」


そう言って不破くんもため息をついた。


「ため息」


さっき言われたことを同じように指摘すると、「忙しいんだよ」と自分のことは棚上げにされた。
営業側のフロアをチラッと覗くと、こっちも人がまばら。


「ほどほどにな」

「不破くんも」


お互いに顔を見合わせる。
不破くんがフッと笑った。
< 2 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop