イジワルな彼とネガティブ彼女
それなのに、彼は私の腕をつかんで、名刺を私のバッグに入れた。


「またな」


それだけ言うと、部下らしき人と一緒に会議室方面へ向かって行った。


あの態度といい、話の内容といい、なんなんだろう。


アシスタント役の足立くんが、


「あの人、SFYホールディングスの人ですよ」


と冷静に呟いたのには驚いた。


確かに、名刺を見ると、あの大手文具メーカーの名前が書いてある。


「あそこがプレゼンするなら、うちは無理ですね」


「足立くん、なんで社名わかったの?」


「一緒にいた人が、社名の入った封筒持ってました」


「へえ、すごい観察力だね」


「ところで、高橋さん、さっきの人とはどういう関係ですか?」


「たいしたことないの、今朝ちょっとぶつかっただけで」


本当のことなんて、言えるわけない。


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