イジワルな彼とネガティブ彼女
よくよく考えてみたら。


何もなかったとはいえ、本田さんと一晩中、一緒にいたんだ。


そう思ったら、急に恥ずかしくなってしまい、胸が苦しくなってきた。


チラッと部屋を見回すと、テーブルの上には冷却シートや風邪薬、イオン飲料が並んでいた。


「おまえ、顔赤いぞ。


また熱上がったんじゃね?」


延ばしてきた手を、思わずはらいのけてしまった。


「なんだよ、心配してるのに。


もっかい熱計れ」


体温計を渡され、しぶしぶ計った。


ピピーという電子音が、静かな部屋に響く。


「見せてみ」


言われるがまま差し出すと、


「39度もあるな」


困った顔して考えこんでいる。


これ以上、迷惑はかけられない。


「本田さん大丈夫です、今日おとなしく寝てれば平気ですから」


「平気なわけねーだろ!


ちょっと待ってろ」


本田さんは立ち上がり、誰かへ電話し始めた。




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