イジワルな彼とネガティブ彼女
「あ、あの・・・」


私のか細い声は、二人には届かないようで。


「なんで、って言われても、なりゆきとしか言えないけど」


「本田さん、前から聞こうと思ってたんですけど。


莉子さんのこと、どう思ってるんですか?」


・・・翼くん、誤解だから。


本田さんとは、何でもないから。


そう叫びたいのに、口の中がカラカラで、言葉にならない。


「俺は、高橋のこと好きだけど。


っていうか、嫌いだったら看病なんてしないし」


・・・な、な、なに言ってくれてんの?


さすがにここで、声が出た。


「本田さん、変なこと言うのやめてください!


翼くん、何でもないから、ごめんね」


本当はもっと力強いイメージで叫んだつもりだったけど、意外と弱々しい声で、それでもさすがに気づいたのか、二人とも私を見ている。


「莉子さん、だいじょうぶですか?」


おじゃまします、と言いながら、翼くんは革靴を脱いでしゃがんで靴の向きを整え、ベッドの近くまで来てくれた。


一歩間違えば修羅場なのに、私は妙に冷静で、靴の脱ぎ方といい揃え方といい翼くんは育ちがいいんだな、と感心していた。



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