イジワルな彼とネガティブ彼女
ふたり同時に箱へ手を伸ばしたから、手が重なった。


前と同じ、足立くんの華奢で細い指。


「あっ、ごめん・・・」


あわてて手を引っこめようとしたら、そのままギュッと引っ張られた。


足立くんに抱きしめられて、なつかしい香りのする胸に顔をうずめた。


「俺じゃダメですか?」


「えっ?」


「俺、吹っ切ったなんて言いましたけど、全然吹っ切れてないから。


まだ、莉子さんのこと、好きだから」


「ごめんね、私は・・・」


「本田さんって、同業他社のライバル企業の人ですよ。


ずっとつきあえるって、本気で思ってるんですか?」


「それは、そうだけど・・・」


足立くんに言われるまで、そんな風に考えたことなかった。


「足立くん、離して」


「それが返事?」


足立くんは、悲しそうな顔をして、腕をほどいた。


「本当にごめんなさい、片づけよろしくお願いします」


逃げるように、会社をあとにした。









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